2011年1月28日、参議院本会議にて、川田龍平が代表質問に立ちました。質問全文を以下に公開いたします。
当日の本会議の模様は、参議員インターネット審議中継
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
2011年1月28日の本会議よりご覧ください。
また、本会議終了後に、川田龍平が直接皆さまにメッセージを配信したUstream放送もご覧になれますので、あわせてご覧ください。http://www.ustream.tv/recorded/12298089
みんなの党の川田龍平です。
初めに、一つ確認させていただきたいことがあります。
昨日の衆議院で、渡辺喜美代表に対し、通告が二、三時間前だったから答えられないと総理はおっしゃった。ですが、要旨は前日に、全文は数時間前に出すのは、皆さんそうしていることです。なぜ、渡辺代表のときに限って数時間前だから答えられないとなったのか、理由を聞かせてください。熟議とおっしゃっているからには誠実に回答することを求めます。
では、私の質問に入らせていただきます。
菅総理が平成の開国と掲げている環太平洋戦略的経済連携協定、いわゆるTPPの条件交渉への参加、これは日本経済、国民生活両方に大きな影響を与える大変重要な政策だと理解しています。
これについてどうしても聞いておきたいことがあります。
包括的な経済連携を通して、貿易の自由化と市場開放を様々な分野に導入するTPPについて、現在、マスコミでは農業に与える影響ばかり取り上げられています。しかし、本当にそうでしょうか。実は、報道に出てくる農業分野の関税撤廃だけではなく、労働市場や環境分野など、全部で二十四の分野で市場化を進めるTPP交渉が議論されている事実は多くの国民に知らされていません。
昨年十一月九日の閣議決定、包括的経済連携に関する基本方針の中には、TPP協定はその情報収集を進めながら対応すると書かれています。しかし、今現在、十分な情報公開がされているとはとても言えません。前原外務大臣、まずは二十四の作業部会で討論されている市場開放分野について現時点での情報をできる限り明らかにしてください。
菅総理、総理が十五年前、厚生大臣だったときの薬害エイズ事件における当事者として申し上げます。生まれてからずっとこの国の医療、そして国民皆保険制度にあらゆる意味で恩恵を受けてきた患者の一人として、このTPPによる市場化が医療に与える重大な影響を強く心配しています。
総理は、TPP参加によりこの国の経済を成長させるとおっしゃっています。では、医療の市場化を進めることで、病院の株式会社経営や患者と医者との間に民間の保険会社が入るようになること、混合診療の全面解禁など、私たち患者に与える影響についてどう考えているんでしょうか。菅総理のお考えを是非聞かせてください。
貧困大国アメリカの例を見ても分かるように、アメリカの医療は、行き過ぎた市場化により、医療サービスの質を低下させ、公的医療保険の範囲を狭め、その結果、医療格差をますます広げるという悲惨な実例がたくさん出ています。医療が商品になれば、利益と効率重視という市場化の性質が患者の負担を増大させ、経済力のない患者、医療費の高い難病患者が切り捨てられる可能性は避けられません。
また、医療従事者に対しても、効率化により一人の医師の労働が更に過重となり、過労死や過労自殺など、今でも苦しい状態に置かれている勤務医の負担だけではなく、医療ミスなど様々な被害が出る可能性があります。自由化で優秀な医師や看護師の国外流失が深刻化し、今既に問題となっている医療従事者の不足と偏在が更に加速するのではないでしょうか。そうして、地方の医療が荒廃すれば、WHOから世界一のシステムだと評価されるこの国の国民皆保険制度が崩れてしまう。徹底した事前検証なしに拙速に進めれば、日本もあっという間に貧困大国になる危険性があります。そして、これらの不安を拭い去るには示されている情報が少な過ぎるのです。
総理、もう一つ分かっていただきたいことがあります。
医療と介護のシステムがどう変わってしまうのか、この不安を抱えるのは私たち難病患者だけではありません。医療に関しては、誰でも立場に関係なくいつか病気になるかもしれず、そして老いていきます。今申し上げたTPPが医療と介護システムに与える影響への不安を、いつか患者になるかもしれない全ての国民の声として受け止めてほしいのです。
日本の代表として諸外国の交渉テーブルに着く前に、まず国内にいる全ての日本国民に向かって総理御自身の具体的なビジョンを語ってください。総理の描く将来像の中に当事者である国民も入れてください。TPP導入を見据えた総理の成長戦略と、それがもたらすこの国の未来図で、私たちの医療と老後の生活はどのような位置付けになっているのか。
開国とは外から押し付けられるものではなく、国民が知らぬ間に勝手にされるべきものでもありません。真の開国とは、私たち自身の意思で行うものです。
TPPと日本の医療制度の在り方について、どうか総理の考え方をお聞かせください。
次に、薬害イレッサについて質問します。
二〇〇二年七月、申請から約五か月という異例のスピードで承認された肺がん用抗がん剤であるイレッサは、承認前に、副作用の少ない夢の新薬として多くのマスコミが絶賛し、その副作用により短期間にたくさんの方が亡くなりました。事前に副作用の十分な説明がされていれば薬害訴訟は起きませんでした。
今月七日、裁判所から被告国と製薬企業の責任を認める和解勧告が出されました。誤解を生む報道が出回っていますが、この和解勧告が出たのは、治験の段階で副作用が全て分からなかったからではありません。命にかかわる情報を隠蔽し、情報を出さなかったことで引き起こされた薬害だからです。
例えば、致死性があるとされた臨床試験結果を致死性がないレベルと改ざんして記載し、肺障害の悪化が確認された実験データの報告を承認前に厚生労働省に伝えないなど、企業による様々なデータの改ざんと無視がされたのです。
厚労省は延命効果未解明のままスピード承認を行った。その結果、半年で百八十人、僅か二年半で五百五十七人もの死者を出したのです。死に至る副作用について情報提供が不十分で、多くの死者を生み出したことに対し国と製薬企業は責任がある。この薬害を解決せよと裁判所は国に求めているのです。
総理、どうかよくお考えください。薬害イレッサの和解勧告を拒否することは、薬害肝炎原告の前で政府が立てた薬害根絶の誓い、そして薬害エイズ事件の悲劇を繰り返す仕組みを平気で放置することになります。
ここにおります衛藤晟一議員、枝野幸男官房長官ら与党PTの働きによって、十五年前、薬害エイズ裁判の和解は成立しました。あのとき、厚生大臣だった菅総理は、原告だった私たちに正面から真っすぐに向き合い、命にかかわる情報の公開に尽力してくれました。弱い者のためにちゅうちょせずに動くことで、二十歳だった私に政治が動くことの大きさ、動けば変わるということを見せてくれました。総理は、自ら薬害エイズの菅とおっしゃる。あのとき、菅総理と枝野官房長官、衛藤議員が尽力してくれたことは、私はこれからも忘れません。
しかし、総理、あの薬害エイズ事件を過去の栄光ではなく、未来につなげていくことが私たち国会議員の務めではないでしょうか。薬害エイズと同様に、薬害イレッサもまた患者への情報提供に欠陥があったから起きてしまいました。あれから十五年たった今も薬害を生み出す仕組みは変わっていないのです。これ以上薬害被害者を生み出さないために、どうか力を貸してください。この国の総理大臣として、薬害イレッサの早期解決のために強いリーダーシップを見せてください。
薬害イレッサは薬害エイズと同じです。原告は、救済を求めているのではないのです。責任に基づいた賠償を求めているのです。どうか総理、総理には判断の前提となる情報が届いているのでしょうか。厚労省は、厚生省は変わっていません。いまだに薬害を引き起こす構造を引きずっている。全く反省がない。是非とも菅総理のリーダーシップで解決していただきたいと思います。
あの薬害エイズ事件を引き起こした最大の原因の一つが官民癒着、すなわち天下りであったことは総理も御存じの事実です。つまり、天下り根絶なくして薬害根絶はないのです。
今年一月一日、石田前資源エネルギー庁長官が東京電力の顧問に就任しました。この人事は何ですか。東京電力から石田氏に直接就任依頼があったので役所のあっせんでないとするならば、あっせんがなかった具体的な証拠を提示してください。法律で決められた再就職等監視委員会もなぜいまだに手を付けられないのでしょうか。明らかな天下りを容認していて何が薬害根絶なのでしょうか。
TPPの医療分野、薬害イレッサに続いて、次にやはり命にかかわる問題であるB型肝炎問題について質問させていただきます。
国の政策による予防接種において注射器や注射針の回し打ちをされた結果、多くの国民がB型肝炎ウイルスに感染させられたこの事件で、国が被害者を救済するのは当然の責任だと考えます。菅総理もそれを分かっているからこそ、施政方針演説で、B型肝炎訴訟における裁判所の所見に前向きに対応し、国民の皆様の御理解を得ながら早期の和解を目指しますと述べられたのだと思います。
ならば、まずは、薬害エイズのときと同じように、国の加害責任について謝罪してください。ただし、菅総理が演説で使われた国民の皆様の御理解を得ながらという表現によって、B型肝炎被害者たちを増税に利用するようなことだけはしないでください。ずさんな医療行政の被害を受け、裁判で苦しみ、更に増税の口実にされるのでは、被害者たちは一生苦しみを続けなければなりません。被害者の全員救済を実現してください。いつまでたっても全面解決されない第二の水俣病にしてはならないのです。
総理にお聞きしたい。民主主義の基本である三権分立は、総理にとってどんな存在なのでしょうか。薬害イレッサ訴訟、B型肝炎訴訟、大阪泉南アスベスト国賠訴訟、どれも司法が国の責任を認め和解を迫っているにもかかわらず、国からの誠実な対応が全く見られないのはなぜですか。大阪泉南国賠訴訟では、環境と厚生労働両大臣が控訴断念を決断した後で、わざわざ内閣がそれを覆し控訴をしています。菅政権にとって国民の命とはそんなにも軽いものだったのですか。
あの歴史的な政権交代で国民が期待したことはこんなものではなかったはずです。あのとき、多くの国民が新しい政治が社会を良くしてくれることを望んだ、最も希望を託したのは、何よりもこの国の未来をつくる子供たちのことでした。民主党の目玉政策である子ども手当について質問があります。
多くの地方自治体からこの手当の地方負担を来年度の予算に入れられないという声が上がっており、その数は日に日に増えています。そして、何よりもそのしわ寄せを受けるのは子供たちです。制度設計に地方の声を入れない地域主権など意味がありません。菅総理、地域主権とは何か、お答えください。
昨年十一月四日、基本制度ワーキングチームにおいて提案された幼保一体給付の政府案では、介護保険をモデルに挙げて、客観的な基準を満たすことを要件に多様な事業者の参入を認めるべきとなっています。保育事業に参入する多様な事業者の中から金もうけ本位で、詰め込み、保育士不足、子供設置の劣悪事業者をどうやって排除するおつもりですか。菅総理、お答えいただけますか。
現在出されている政府案には、こども園における保育サービスを二重にし、オプション部分については価格の上限を設けないという内容も入っています。これは、公定価格を原則としながらも、入学金や保育料、体操、音楽などの課外活動は別料金になり、親の収入で子供が受けられる保育の質に格差ができてしまいます。経済的に余裕がなければ、以前多くの死者を出したちびっこ園のような利益重視の危険な保育所に預けるしかないという可能性も出てきます。
現行の児童福祉制度を解体し、規制緩和により保育を市場化することで起きる格差拡大は、全ての子供に質の良い保育サービスをという政府のスローガンと逆行すると思いますが、いかがでしょうか。
当事者の声を聞かないもう一つの例として、政府は、今まで児童福祉制度として機能してきたこの国の保育制度を実質的に解体することとなりかねない制度設計、こども園を始めとした子ども・子育て新システムを早急に進めています。ここでもまた、保護者や現場の保育関係者など当事者への説明がほとんどなされず、また、その声をほとんど聞かないまま進めています。
今この国で深刻な問題になっている子供の貧困。子供の貧困は女性の貧困にほかなりません。本当に必要なのは女性たちが働きながら安心して子供を産み育てられる環境をつくることです。
児童福祉制度を解体することは、国が子育てという分野からその責任を引き揚げるということです。保育がどんどんサービス産業になっていけば、親たち、特に母親たちの選択肢はますますなくなるでしょう。悪いのは、負担を押し付けられ悲鳴を上げる地方自治体でしょうか。当事者である親たちや現場の人々、地域の声を無視して子ども・子育て新システムを入れた結果、更に自治体の負担が増えたとき、一体政府はどうするつもりなのでしょうか。
冒頭でTPPについて申し上げた私の懸念と同じです。現場の声、当事者たちの声を無視した形で政策を押し付けるやり方には反対です。
私は、子育てをする母親の声を聞く会を続けていますが、聞こえてくる声は多くの地方自治体と同じ、公設保育園の増設などに財政措置を講じてほしいというものです。子供のために国が本気でお金を注ぐこと、それなしに、親が、地域が苦しむ制度の中で、子供が本当に生きていて楽しいと思える社会は実現できません。
一時的なばらまきより、長い将来安心できる子育て支援とは何かを女性たちに聞くこと。国民の命にかかわる医療については患者に正確な情報開示をすること。誰のための成長戦略なのか、その中身を当事者である国民に知らせること。国会での与野党の徹底した議論をすること。今日ここで申し上げたテーマについて、総理が描くこの国のビジョンと、それを実現されるための徹底した情報公開と誠意あるリーダーシップをしっかりと見せていただきたい。
私は、おかげさまで、今月三十五歳になりました。HIVに感染してから二十五年がたちました。皆様に支えられて、今もこうして発症もせずに生きることができています。これも安心して利用できる医療制度があってこそです。私は、誰もが安心してかかれる医療、そして国民皆保険制度を何としても守りたい。命が最優先される社会の実現を目指して全力を尽くします。
質問を終わります。ありがとうございました。
(以上は、正式に確定した議事録ではないことを、あらかじめご了承くださいませ)